肺の血圧が高い-肺高血圧症

 

肺高血圧症(PH)とは、肺血管の血圧が高い病気のことです。比較的稀な疾患ですが、年齢に関係なく起こり得る複雑な疾病です。診断までに時間がかかる場合もあり、かなり進行した状態になるまで気づかれないことがあります。PHは5種類に分類され、そのうちの1つに肺動脈性肺高血圧症(PAH)があります。
 

肺高血圧症の分類(2013年:第5回肺高血圧症ワールドシンポジウム ニース会議)

  1. 肺動脈性肺高血圧症
  2. 左心性疾患に伴う肺高血圧症
  3. 肺疾患および/または低酸素血症による肺高血圧症
  4. 慢性血栓性肺高血圧症(CTEPH)
  5. 原因不明の複合的要因による肺高血圧症

PHでは、肺血管の収縮や肥厚が生じており、血液の流れが悪くなっています。したがって、血管の収縮と肥厚による抵抗を克服するために、心臓がより激しく拍動しければならなくなります。また、心臓に負荷をかけるだけでなく、長時間経過すると、血管壁が損傷(あるいは線維化)して、より厚く堅くなり、さらには完全に塞がってしまう可能性があります。 最終的には、心臓肥大の原因および心臓の柔軟性の消失につながり、心臓から肺や全身組織への血流がいっそう減少し、その結果、更なる病気の徴候も発現し始めます。
 

<肺動脈性肺高血圧症とは?>
血液は、肺動脈と呼ばれる大きな血管を通って心臓から肺に運ばれます。PAHを発症している患者は、肺動脈および分岐して細くなった血管(毛細管)が収縮・肥厚しています。健康な人の肺動脈では、血管への弛緩作用(血管拡張物質)と収縮作用(血管収縮物質)のバランスが維持されています。 PAHでは、血管収縮物質エンドセリン-1(ET-1)が正常レベルより多く生産され、血管壁にあるエンドセリン受容体に結合します。これが肺動脈を過度に収縮させる原因であり、また肺血管の線維化にも関与しています。血液は、肺で酸素を取り込み、心臓に戻り、全身に流れ出ます。肺への血液が少なくなることは、全身や筋肉を正常に機能させるための酸素が不足することを意味します。 PAHの患者さんは呼吸数が多く、疲れ易いため、疾患が進行すると簡単な動作さえ苦労することになります。肺動脈性肺高血圧症(PAH)は大きく分けて次の2種類に分類されます。

肺動脈性肺高血圧症(PAH)は次のように分類されます。

1.肺動脈性肺高血圧症

1.1 特発性肺動脈性肺高血圧症(IPAH)

1.2 遺伝性肺動脈性肺高血圧症(HPAH)

1.2.1 BMPR2

1.2.2 ALK1、ENG、SMAD9、CAV1、KCNK3

1.2.3 不明

1.3 薬物および毒物誘発性肺動脈性肺高血圧症

1.4 他の疾患に関連する肺動脈性肺高血圧症

1.4.1 結合組織病

1.4.2 HIV感染症

1.4.3 門脈圧亢進症

1.4.4 先天性心疾患

1.4.5 住血吸虫症

<PAHの徴候>

  • 息切 れや浅い呼吸
  • 過度の疲労
  • 起立時あるいは階段を登る時にめまい
  • 失神
  • 足首や脚のむくみ
  • 労作時の胸痛

 <PAHの診断>

PAHの徴候の多くが、心臓や肺の他の病気と似ているため、診断が遅くなることがあります。PAHが疑われる場合は、以下の検査が行われます。

  • 6分間歩行試験
  • 日常動作機能の容易さの評価
  • 心電図
  • 心エコー図
  • 右心カテーテル

またPAHの診断には、PAH以外の肺動脈閉塞あるいは肺疾患障害などの他の原因を明らかするための検査も実施されます。

 

引用文献
Simonneau G et al.: Eur.Repir.J. 2018: in press [https://doi.org/10.1183/1399300.01913-2018]